こんにちは!
「エンベデッドシステムスペシャリスト」の受験方法、出題範囲、勉強の仕方、などを紹介します。
高度情報処理技術者で「エンベデッドシステムスペシャリスト」を対象とした論文形式を含む試験です。
※2023年度から論文試験となりました。
後述しますが、エンベデッドシステムスペシャリストは高度試験の中でも特殊な位置づけです。
というのも、他の情報処理試験と異なり組み込み技術者が対象となるため「ハードウェア」への深い知識が求められます。
ソフトウェアとハードウェアを適切に結び付け、現実世界に働きかける組み込み技術ならではの制限などが他の区分と一線を画します。
(参考)筆者プロフィール
理工系大学院卒業。学生時代の専門は物理。
外資メーカーのSystem engineer。一般的なITの知識はあるがITを専門的に学んだことはない。
ITパスポート、基本情報技術者、応用情報技術者保有。
2022年春期システムアーキテクト、2023年秋期エンベデッドシステムスペシャリスト取得。
本記事の対象
・エンベデッドシステムスペシャリストを受ける人
⇒ 本記事にて私の勉強法等記載しますので参考にしてください!
・エンベデッドシステムスペシャリストを受けようか検討している人
⇒ この記事を読んでみて判断材料にしていただければ幸いです。
・高度情報処理試験を知らない人
⇒ この記事を通して知っていただければ嬉しいです。
目的
・エンベデッドシステムスペシャリストのレベル感をつかんでいただく。
・メリットを紹介する。
・勉強方法を提案する。
概要
- 情報処理技術者試験
情報処理技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省が、情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験です。
情報システムを構築・運用する「技術者」から情報システムを利用する「エンドユーザ(利用者)」まで、ITに関係するすべての人に活用いただける試験として実施しています。特定の製品やソフトウェアに関する試験ではなく、情報技術の背景として知るべき原理や基礎となる知識・技能について、幅広く総合的に評価しています。
※IPAのHPより抜粋 https://www.jitec.ipa.go.jp/1_08gaiyou/_index_gaiyou.html
- エンベデッドシステムスペシャリスト対象者像
高度IT人材として確立した専門分野をもち、IoTを含む組込みシステムの開発に関係する広い知識や技能を活用して、市場動向・関連業界の動向を踏まえて最適な組込みシステムの事業戦略や製品戦略を策定し、ハードウェアとソフトウェアの要求仕様の策定、及び要求仕様に基づいた組込みシステムの設計・構築・製造を主導的に行う者
※IPAのHPより抜粋 https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/es.html
エンベデッドシステムスペシャリストとは超ざっくりいうと、「ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた組込み・IoT系のエンジニア」です。
具体的には「自動車の自動運転システム」「施設監視用のドローン」等です。
内容
午前I、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの各段階にて採点が行われます。
例えば、午前Ⅰ落ちたらそれ以降の採点はしてもらえません。
- 午前Ⅰ 選択式
応用情報の午前相当の内容。応用情報 or 他の高度試験合格済であれば免除。
- 午前Ⅱ 選択式
エンベデッドシステムスペシャリストの内容に特化した選択式。これはテキスト以外にもアンテナ張って勉強していないと難しいです。
ここで躓く受験者は非常に多いので本当に注意が必要な試験です。
というのも、「エンベデッドシステムスペシャリスト」に特化した内容の選択式といいつつ、エンベデッドシステムスペシャリスト以外の分野からもかなり多く出題されます。
実際「システムアーキテクト」「応用情報技術者」からの出題も多くあり、他の高度試験の午前Ⅱからも数多く流用されています。
おそらく令和に入ってから高度試験の垣根を超えた出題傾向になっていると考えられるので、受験する分野に限らない対策が必要になってきます。
- 午後Ⅰ 記述式
形式としては応用情報の午後と同等(応用よりもちょい長くてむずいかも。)。内容はエンベデッドシステムスペシャリストに特化した内容。
しっかりと過去問に取り組むことが重要。
- 午後Ⅱ 論述式
論文形式。実務の内容に置き換えて解答する。
「論文の書き方」を身に付けること。ノリでいけると思うと落ちます。
勉強時間はそこまで多くなかったですが、
「論文の書き方」「ロジック」にはこだわって準備していたので、そこを評価してもらえたかと。
実は私は令和5年度のエンベデッドシステムスペシャリストの論文試験への対策はほぼゼロです。
というのも、システムアーキテクトを受験した際にかなり綿密に対策したことで論文の対応を流用できたためです。
論文対策に関しては別途説明いたします。
時期
年に一回(秋、4月)。
申し込みから受験まで時間がないので、申し込み前から勉強を進めておくことをお勧めします。
難易度
組み込みの実務経験あり ⇒ やや難
組み込みの実務経験なし ⇒ 難(他の高度試験を取っている方でもかなり苦手意識があるようなのでちょっと特殊です。)
※IPA HPより抜粋 https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/seido_gaiyo.html
エンベデッドシステムスペシャリストは「レベル4」に該当する試験区分にあたります。
午後Ⅱでは実務経験を問う論述問題もあり難易度は高めです(合格率約15%)
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:試験制度:試験区分一覧
試験範囲
試験範囲は他の高度試験と同様に非常に広いです。
組込みシステム・IoT を利用したシステムの事業戦略策定、実際の要件定義、開発時のソフトウェア・ハードウェアに対する理解、など広範囲に渡ります。
また大きなポイントとして、令和5年度より「システム開発の全体をマネージできるか」を重視したことから午後Ⅱが論文形式となりました。
令和4年度までは技術的な側面の強い試験でしたが、開発全体を俯瞰し理解しながらリードできる能力も見られていると考えて対策する必要があります。
詳しくは下記のシラバスを参照ください。
※シラバス
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_04hanni_sukiru/_index_hanni_skill.html#syllabus
メリット・デメリット
メリット
勉強から合格まで踏まえて下記の4点のメリットがあります。
- 組み込みシステムの要件定義から運用までの流れを理解できる。
要件定義から運用まで理解できるようになります。
この流れがわかると各フェーズでのすべきこと、意識すること、が分かるようになります。視野が広がる。
- 自分の業務を振り返れる(経験として熟成できる)。
論文を書く上で自分の業務を振り返らなければなりません。自分の業務を俯瞰する意味でも非常に有意義でした。
- 組み込み技術の転職オファーが来るようになる。
内資、外資に限らず組み込み技術(主にメーカー)のオファーが来るようになります。とはいえ、組み込み技術者は実戦経験が大事なためここはそこまでメリットではないかも。
- コスパよい
やるべきことをやれば勉強時間短くて済みます。
時間コストと金銭面コストに対しての対価は基本情報、応用情報よりも多い気がします。
(個人的には基本情報と応用情報は二度と受けたくない…)
デメリット・注意点
デメリットは特にない気がします。
注意点としては下記かなぁと思います。
- 組み込み技術の経験なしでの受験はかなり厳しい。
先にも述べた通り、「ハードウェア」と「ソフトウェア」の両方をわかっている必要があり、さらにそれらを駆使して現実世界に作用するようなシステムの問題がでます。
物理的な問題なども出るので関係ない人は無理して受ける必要がないかと思います。 - メーカー勤務などではないと正直取る意味ない。
組み込み技術は特殊なため、本試験を取得しても活用できる先が限られます。実際受験者もほかの高度試験と比べて非常に少ないです。
勉強方法
勉強始めるにも「戦略」が大事だと考えています。
下記参考にして勉強計画考えてみてください。
※ただ単に資格がほしいだけ、という人には向いていないかもしれないです。捨て問なしで結構がっつり勉強しています。
スケジュール
テキスト+論文対策を中心に説明します。
午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰはテキスト中心、午後Ⅱは自分で想定問題を設定して論文の準備を仕込むって感じで進めました。
前半(~3か月前)
どの試験でも主張していますが、とにかく「全体感」をつかむ時期です。
エンベデッドシステムスペシャリストは範囲が広いし内容ももやっとしていてどんな問題が出るかイマイチわからないと思います。
全体の範囲はどうなのか?難易度はどんなものか?を初期に把握します。
- テキスト(午前Ⅰ、Ⅱ、全体の基礎知識) 80%
- テキスト(午後Ⅰ) 10%
- 論文準備(午後Ⅱ) 10%
まずは総合的なテキストの前半部分(午前Ⅰ、Ⅱ、基礎知識)を中心に取り組みます。
できれば2周くらいしてある程度把握した状態が目標(完璧じゃなくてもOK)。
ぶっちゃけ基礎できてないと午後Ⅰに対応できません。
後期(~1週間前)
この時期は「基礎知識忘れずに軸足は論文に」という進め方がおすすめです。
(こういうスケジューリングしていないと論文対策せずに本番迎えちゃうので)
- テキスト(午前Ⅰ、Ⅱ、全体の基礎知識) 20%
- テキスト(午後Ⅰ) 30%
- 論文準備(午後Ⅱ) 50%
直前(1週間前~)
直前期は「過去問での総ざらい&戦略」「論文仕上げ」です。
- 過去問、戦略 50%
- 論文準備 50%
ちなみに、「戦略」とは…
- 午後の選択問題をどの問題に絞るか? → 基本的には全ての問題を網羅しておき直前で絞るのがベター。時間がなければ決め打ちで選んでおく。
- 一問にどれだけ時間をかけるか? → 単純に「時間÷問題数」で一問にかける時間を決めておく。時間がなくて解ける問題に手が出せなかった、ということがないように。
の二点です。まずは楽せずすべての問題に対策しておき直前に戦略を練りましょう。
テキスト、勉強方法
基本的には早い時期から総合的なテキストやって、早いタイミングから論文の素材集め進めてました。
総合的なテキスト「うかるエンベデッドシステムスペシャリスト」
基本情報、応用情報は「合格教本」にお世話になりましたが、
エンベデッドシステムスペシャリストはこの「うかる」シリーズを使いました。
※実際私は2021‐2022年度版を使用し、論文対策はシステムアーキテクトの参考書で対応しました。
論文対策
論文対策に関しては別途記事書いています(システムアーキテクトと同様)
自分が意識していた論文の書き方は全ての試験論文に適用可能なのでがっつり書いていますので参考になると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今後、ITの知識はどの業界・職種でも必須です。逃げずにこういった資格で網羅的に勉強するのは非常におすすめです。
実際、私はIPAの試験を通して情報系の技術者としてのキャリアを歩んでいます。
本記事が参考になってエンベデッドシステムスペシャリストのモチベーション上がれば幸いです。
以上、お読みいただきありがとうございました!